[ 講師から ]
翻訳という作業をはじめるには、traduttore,
traditore(翻訳者は裏切り者)といわれるように、原文とのあいだで単語を一対一で対応させて訳すことはもちろん、文章の構造を忠実に再現するこ
とも所詮は無理なのだと最初に頭に入れておくのがよいと思う。
それを前提にして、実際に翻訳に取り掛かるときに、まず手をつける作業は何かを見ていこう。
当然ながら、訳すべき文章の性格や、その長さ、さらには翻訳に与えられている時間、翻訳の目的など、種々の要素を考えなければならない。たとえば、きわめ
て短時間のうちに、ともかくも意味が通じればよい、あるいは大要がつかめればよい翻訳を求められている場合と、時間の制約は厳しくないが、公表されてあら
ゆる専門家の目に触れる可能性のある訳文が必要とされる場合、さらにはビジネスあるいは外交上の交渉に用いられる資料となるべき文章を訳す場合などで、訳
者の対応が異なるし、また異ならなければならないことは、容易に理解できるだろう。 ところで、これから取り上げるのは新聞の記事であり、翻訳の目的はできる限りフランス語らしい文章で、しかも正
確に原文の意味を伝えることである。そうだとすればなおのこと、逐語訳を排して、必要ならば文章の順序を入れ替えるくらいの心構えで取り掛からなければな
らない。すなわち、最初に手をつけるのは、一つ一つの単語にとらわれて、それを和仏辞書(必要ならば和英辞書と英仏辞書も利用して)で調べることよりも、
文書全体、それぞれの段落、それぞれの文章で何が述べられているのか、筆者の意図は何か、それをフランス語で表現するにはどうすればよいかを考えることで
ある。(仏作文講義「翻訳について」抜粋)
[生徒から]
「時事記事を読む」ということは、フランスの実情をタイムリーに知るために大変有用です。彌永先生の金曜日の講座「仏作文」は、そのホットなニュースを素
材にし、日本語で書かれた新聞記事を仏訳します。フランス語で書かれた関連記事も渡されるので、「フランス語を読む」という事も同時に訓練されます。辞書
を片手に四苦八苦しながら訳した課題にはぎっしり朱が入って戻ってきますが、それだけ丁寧に添削してくださる、手抜きのない指導です。日本語をフランス語
に置き換えるテクニックだけに留まらず、政治や経済、文化や社会といったフランスに関わる幅広い知識、時代の流れの中で変化している生きたフランス語をわ
たしたちは学んでいますが、先生の授業を受講する生徒たちは皆一様に、こうした質の高い授業に加え、先生のお人柄にも惹かれています。まさに「知識の泉」
ともいえる深い教養をお持ちにも拘らず、衒いのない柔らかな物腰、同じ目線で生徒と接して下さるその優しさが先生の大きな魅力です。
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